航空宇宙技術遺産とは

日本航空宇宙学会が我が国の航空宇宙技術発展史を形づくる画期的な製品および技術を顕彰して後世まで伝え,今後の航空宇宙技術の発展に寄与することを目的として、我が国の航空宇宙技術発展史上の画期的な製品および技術に対して、航空宇宙技術遺産を認定するものです。

 

お知らせ

航空宇宙技術遺産の候補を募集致します

2023年6月18日

募集要項

目  的:日本航空宇宙学会が我が国の航空宇宙技術発展史を形づくる画期的な製品および技術を顕彰して後世まで伝え、今後の航空宇宙技術の発展に寄与することを目的として、我が国の航空宇宙技術発展史上の画期的な製品および技術に対して、航空宇宙技術遺産を認定します。
対象技術:我が国の航空宇宙技術発展史上の画期的な製品および技術
認  定:2024年4月の日本航空宇宙学会定時社員総会において認定を行い、認定証を贈呈します。
件  数:数件程度
推薦方法:日本航空宇宙学会の支部・部門を通してご推薦いただくか、個人推薦の場合は正会員5名以上のグループにてご推薦ください。

推薦様式: 【様式】航空宇宙技術遺産 推薦書
推薦締切:2023年 8月18日(金)まで

【問合せ先】一般社団法人 日本航空宇宙学会 事務局
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-1-21 近三ビルヂング4階
TEL:03-6262-5313/FAX:03-6262-5314
E-mail:office@jsass.or.jp

航空宇宙技術遺産認定

令和5年4月14日に開催された第54期定時社員総会の会員の集いにおいて、第1号となる6件の航空宇宙技術遺産が認定されました。また,認定された技術に関連した展示を行っておられる博物館などに,認定証をお贈りしました。

航空宇宙技術遺産 第1号

認定技術遺産名称 認定理由/認定証のお贈り先
二宮忠八の動力飛行研究 認定理由:

  • 二宮忠八翁は、有人動力飛行の実現を目指し飛行器の研究開発を行った我が国の航空技術の先駆者である。カラスが滑空する様から着想した固定翼のカラス型飛行器や、有人飛行を前提にした玉虫型飛行器の模型を製作。推進力にはプロペラを用い、飛行機の原理を独自に発見した。二宮翁考案の飛行器が実現することはなかったが,飛行原理に対する様々な文書や模型飛行器等の歴史的史料は二宮翁の独創性と先進性を示すものである。

 

認定証のお贈り先:

STOL 実験機「飛鳥」で実証した
低騒音短距離離着陸技術
認定理由:

STOL実験機「飛鳥」はUSB(Upper Surface Blowing)方式の短距離離着陸実験機である。ターボファンエンジンを主翼上面に配置し、フラップに沿ってエンジン排気を下方へ曲げることでSTOL性を確保すると共に、地上への騒音を大幅に低減した。3年半にわたる飛行実験で、パワードリフト機の空力・飛行性を実証する世界的にも貴重なデータを取得した。同機が我が国の航空技術の発展と人材育成に果たした役割は大きい。

 

認定証のお贈り先:

日本初の純国産ジェットエンジン
「ネ-20」技術
認定理由:

ネ-20は、日本初、世界でも最初期の実用ジェットエンジンであり、我が国の民間用を含むジェットエンジン開発の先駆けとなった。海軍航空技術敞は、従来の研究成果を元に、ドイツから入手したわずかな設計図類を参考に、独自にジェットエンジン(ネ-20)の設計、試作を行い、設計作業開始からわずか8ヶ月後の1945年8月7日に、ネ-20を搭載した橘花が高度600m、飛行時間12分間の初飛行に成功した。以上より、日本初の純国産ジェットエンジンと称するにふさわしい。

 

認定証のお贈り先:

「はやぶさ」による世界初の
小惑星サンプルリターン技術
認定理由:

「はやぶさ」は,地球圏の月以外の天体において、着陸と離陸および試料採取と回収にいたるシーケンスの実施に世界で初めて成功した。これにより我が国は、イオンエンジンや光学航法を用いた惑星間航行、小惑星近傍誘導制御、惑星間軌道からの耐熱カプセルによるサンプル回収等の深宇宙探査技術面で世界の第1線に立った。一連の運用の中で遭遇した異常事態にも、卓越した運用技術で対応し全体シーケンスを完結した。理学分野では、当時世界最高解像度の表面画像を含む各種近傍観測データならびに回収サンプルの分析により、小惑星の構造・組成・生成過程等について画期的な知見をもたらした。本技術により、物質を地上設置の大型/高性能分析装置によって測定する「サンプルリターン観測方法」を確立し、宇宙科学の発展に大きく寄与した。

 

認定証のお贈り先:

技術試験衛星Ⅶ型で実証した世界初の
自動自律ランデブ・ドッキング技術
認定理由:

技術試験衛星Ⅶ型(ETS-Ⅶ:「おりひめ・ひこぼし」)のランデブ・ドッキング(RVD)実験系は完全自動RVDを世界に先駆け開発・実現した。完全自動RVDを行うためには自動・自律RVD、安全性の高いセイフRVDの実現が不可欠となる。前者に対しては、センサの計測データより相手宇宙機との相対位置や接近速度等を把握、接近/離脱の軌道を自動生成し、飛行制御、ドッキングを行う一連の機能を実現した。ドッキング精度も四半世紀経過後の今も世界最高精度である。後者に対しては、接近軌道設計上の工夫、異常発生時の自動離脱機能、機器の冗長設計、安全管理プログラム等により安全性の高いセイフRVDを実現した。ETS-Ⅶ RVD系により確立した技術は宇宙ステーション補給機HTV、次世代のISS補給機HTV-Xにも適用されており、今後の軌道上サービス宇宙機や月補給機等への適用も期待される。

 

認定証のお贈り先:

月の縦孔・地下空洞を発見したSELENE「かぐや」地形カメラによる
観測ならびにデータ解析技術
認定理由:

SELENE(愛称「かぐや」)搭載の地形カメラの撮像データの解析により、月面基地として最も有利な条件を有する地下空洞へと続く縦孔を世界で初めて発見した。SELENEは我が国初の本格的な月周回観測機であり,地形カメラは月の全球にわたる 10m/画素の解像度を持つ立体視画像・可視画像データを撮像した。最大 50Gbit/日にも上るデータを地上へ効率的に伝送するため,DCT 圧縮方式の採用や、符号化テーブルや量子化テーブルの工夫が行われた。こうして月全球について取得された様々な太陽光角度における膨大な観測データについて,計算機による自動認識技術を開発することにより,月面最大級で今後の基地利用・科学探査において最も重要な,月地下の空洞に通じる縦孔三つを発見することに成功した。

 

認定証のお贈り先: