電気推進・先端推進の研究開発の現状

 我が国の電気推進の研究開発は、1980年代初頭の技術試験衛星Ⅲ型(ETS-Ⅲ)の直流放電型イオンエンジン、同Ⅳ型(ETS-Ⅳ)のパルスプラズマスラスタ、また X線天文衛星たんせい4号 (MST-IV)、 スペースシャトルによる人工オーロラ実験SEPAC、宇宙実験・観測フリーフライヤー (SFU) のパルス型MPDアークジェットと、その飛行実績を重ねてきた。その後、米国で小電力DCアークジェットがINTELSAT 8 のバス機器となり、我が国でも技術試験衛星「きく6号」(ETS-Ⅵ)、通信放送技術衛星「かけはし」(COMETS)や技術試験衛星「きく8号」(ETS-Ⅷ)で直流放電型イオンエンジンが静止衛星バス機器として搭載された。

 そして、2003年5月9日13時29分、M-Vロケット5号機で内之浦から小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられた。2010年6月13日地球に帰還した「はやぶさ」でのマイクロ波イオンエンジンの果たした大きな成果は皆様の記憶にも新しいところであろう。その後、「はやぶさ2」が打ち上げられ、直流放電型イオンエンジンを搭載した超低高度衛星技術試験機 (つばめ:SLATS)なども打ち上げられている。

 また、超小型衛星「ほどよし4号機」での「小型イオン推進システム」の搭載、イオンエンジンを搭載するソーラー電力セイル探査機による木星トロヤ群小惑星探査計画も検討されている。また、「PROITERES」では、2号機でのパルスプラズマスラスタ、同3号機でのホールスラスタの搭載を目指している。JAXA-ESA共同開発の水星探査計画「BepiColombo」にも欧州のイオンエンジンが搭載されることになっている。